![Melodi [LP] – キット・セバスチャン(Kit Sebastian)](https://mudic.jp/wp-content/uploads/2025/01/melodi.jpg)
Melodi [LP] – キット・セバスチャン(Kit Sebastian)
『Melodi [LP] 』は、2021年(令和3年)7月19日に発売された、ロンドン・フランスを拠点に活動している男女デュオ「キット・セバスチャン(Kit Sebastian)」の2nd(2枚目の)アルバムです。
雑誌「Shindig! 」の2022年アルバムの1位に選出されました。
Melodi [LP] – キット・セバスチャン(Kit Sebastian)のデータ
INFORMATION | |
曲名 | ①Yalvarma (Don’t Beg) ②Agitate ③Yeter (Enough) ④Melodi (Melody) Part 1 ⑤Melodi (Melody) Part 2 ⑥Elegy For Love ⑦Affet Beni (Forgive Me) ⑧Inertia ⑨Ahenk (Harmony) ⑩Please, Don’t Take This Badly |
発売日 | 2021年(令和3年)7月19日 |
作詞作曲 | ①~⑩キット・セバスチャン・エリオット・マーティン(Kit Sebastian Elliot Martin)とエミー・メルヴェ・エルデム(Emine Merve Erdem) |
録音参加メンバー | Desighn:オーエン・トーザー(Owen Tozer) Mixed:篠田秀太(Shuta Shinoda) Mastering:ピート・ノーマン(Pete Norman) |
Melodi [LP]の解説
![Melodi [LP]の解説](https://mudic.jp/wp-content/uploads/2021/10/kit2022.jpg)
雑誌「Shindig! 」の1位に選出されるキット・セバスチャン [画像出典:Facebook]
セカンド・アルバム『Melodi』は、前作のデビュー・アルバム『Mantra Moderne』を2019年(令和元年)にリリースしてから、コロナ・ウィルス(COVID-19)のパンデミックが蔓延したため、制作に時間がかかったといいます。
女性ボーカルのメルヴェ・エルデム(Merve Erdem)は、「最初のアルバムよりも、複雑で、予想よりもすこし長くレコーディングかかった」と語ります。
デビュー・アルバムで輝かしいデビューを飾った(ヒットした)ため、次回作による期待が高まりましたが、キッス・セバスチャンは『Mantra Moderne』から、一歩進んで、楽器とサウンドの新たな領域を探求しはじめました。
「コロナで都市部がロック・ダウン中、メンバーが以前よりも家で多くの映画を見るようになり、アルバムも前作より映画的(視覚・物語)になっているのがわかるよ」とキット・マーティン(Kit Martin)は語ります。
サウンドには、弦楽器=ヴィオラのエリー・ワン(Ellie Wang)とトランペットの杉山ムネユキ(Munéyuki Sugiyama)が加味され、彩りを与えています。
出典:jazzrevelations.com
①Yalvarma (Don’t Beg)
①Yalvarma (Don’t Beg)は、セカンド・アルバムのオープニングを飾るナンバーで、ギリギリ、アルバム収録曲になりました。
歌のテーマは、失敗した関係と愛されたいという承認欲求という「二つの願望」の二面性について歌われています。
サウンドは、アナログシンセサイザー、パーカッション、マルチトラッキング・ボーカル(合唱団のようなサウンド)を探求しています。
②Agitate
③Yeter (Enough)
③Yeter (Enough)は、貧しくとも野心的な女の子が、誰かになるために苦労するテーマを歌っています。
サウンドは、それぞれのチャンネルに楽器を吹き込み、電子楽器と民族楽器が合成されています。70年代に活躍したイタリアのシンセがウード(中東・北アフリカの弦楽器)と出会い、日本のモノフォニック・シンセがシタール(インドの弦楽器)に出会い、そのサウンドの多様性はアゼルバイジャンの民族音楽から、クラシックのバッハまでと幅広いです。
④Melodi (Melody) Part 1
④Melodi (Melody) Part 1は、セカンドアルバムのためにレコーディングされた最初のトラックで、タスカム社の8トラック・カセット・マシンが使用されています。
最初の発想は、北アフリカのトゥアレグ族(ベルベル人系の遊牧民)の音楽をヒントにギターで作曲されたものでしたが、自然とピアノに置き換えられ、スイングするジャズ・ナンバーに変化しました。
ファルフィサ社のオルガンやワウワウ・ペダルを利用したギターも利用して、親近感のあるサウンドになっています。
⑤Melodi (Melody) Part 2
⑤Melodi (Melody) Part 2は、タスカムの8トラック・カセットマシン(MTR)で録音された最後の作品です。
④Melodi (Melody) Part 1のリプライズとして、ラテンパーカッションとMS20シンセで、ほぼ同じ楽器を使っています。
詞のテーマは、悩みながらも逃げられないメロディについて歌われています。
⑥Elegy For Love
⑥Elegy For Loveは、シングル・カットされたナンバーで、二人のロマンスを守るために最後の深夜のミーティングをする内容を歌っています。
グロッケンシュピール(鉄琴の一種)、ストリングス、トランペットを加え、ソウルフルで多様な楽器が入り混じるナンバーに仕上がっています。
⑦Affet Beni (Forgive Me)
⑦Affet Beni (Forgive Me)は、ガボール・ザボ(Gábor Szabó)=ハンガリーのジャズ・ミュージシャンに影響を受けて、バラライカ(ロシアの弦楽器)のメロディをギターに置き換えています。
トルコ、東ヨーロッパ、ブラジル、コーカサス地方など様々な民族音楽をブレンドしたナンバーです。歌詞のテーマは、翌朝には効力を失う一夜の恋愛物語について書かれています。
⑧Inertia
⑧Inertiaは、アルバムからの2ndシングルで、歌のテーマはドイツの女優・歌手であるマレーネ・ディートリヒ(Marlene Dietrich)主演の映画『嘆きの天使(Der Blaue Enge)』の演技に感化されて書かれ、夢のようなシネマティックなトラックに仕上がっています。
⑨Ahenk (Harmony)
⑨Ahenk (Harmony)は、イタリアの作曲家「ニーノ・ロータ(Nino Rota)」の1969年の映画『サテコリン(Satyricon)』のサウンドトラックと、古代ギリシャの楽器、リラ(lyre)の音楽に影響を受けています。
メイン楽器はウード(リュート属の中東の弦楽器)ですが、メロディに合わせて、ジター、バラライカ、ブルブルタラング(インドの弦楽器)が入まじり、不協和音を奏でるピアノと絡み合います。
⑩Please, Don’t Take This Badly
⑩Please, Don’t Take This Badlyは、アルバム最期をしめくくるラストナンバーで、Born Bad recordsとトロピカリア(ブラジル)のレコードによってリリースされたチャ・チャ・チャ(キューバ起源のリズム)コンピレーションにインスパイアされたものです。
遊び心のあるオーケストラ、特にトランペットとストリングスのコール・アンド・レスポンスを試しています。
キット・セバスチャンの中でもとりわけラテン・パーカッションが目立つリズムが重要な位置をしめるナンバーです。
出典:Facebook